アメリカの株式の「10倍株」達成ランキングです。2010年代の10年間で株価が10倍になった大化け銘柄の一覧になります。米国の株式市場は、日本よりもリーマンショック(2008年)の後の2009年後半の市況の立ち直りが早かったこともあり、十倍を達成した銘柄(テンバガー)は実はそれほど多くありませんが、達成企業の業種が幅広いという特徴があります。ネット企業だけでなく、宅配ピザ、業務用掃除機、ヨガウェア店、美容品店など従来型の業種もランキングの上位につらねています。(参考資料:ロイター、ブルームバーグ、ウォールストリート・ジャーナル、スナップアップ投資顧問のレポートなど)


【2010年代】アメリカの「10倍株」ランキング

アメリカの2010年代の10倍株の銘柄ランキングです。2009年の年末と、2019年の株価を比較しています。1位はドミノ・ピザの37倍。2位のネットフリックス(Netflix)を上回る急成長(大化け)となりました。3位は業務用掃除機のEVIインダストリーズです。

順位 銘柄 業種 倍数 2009年末の終値 2019年11月5日の終値
Domino's Pizza
(ドミノ・ピザ、DPZ)

説明↓
ピザ宅配チェーン 37倍 7.43ドル 276.31ドル
Netflix
(ネットフリックス、NFLX)

説明↓
ネット動画配信 36倍 7.95ドル 288.03ドル
EVI Industries
(EVIインダストリーズ、EVI)
業務用洗濯機の販売 30倍 1.16ドル 34.4ドル
MarketAxess Holdings
(マーケットアクセス・ホールディングズ、MKTX)

説明↓
債券取引システム運営会社 28倍 12.43ドル 343.73ドル
Exact Sciences
(イグザクト・サイエンシズ、EXAS)
直腸がん検査材メーカー 25倍 3.34ドル 84.23ドル
Abiomed
(アビオメッド、ABMD)
医療機器メーカー 24倍 8.90ドル 217.54ドル
Tucows
(トゥカウズ、TCx)
インターネット関連機器・サービス 20倍 2.76ドル 55.97ドル
DexCom
(デクスコム、DXCM)
血糖値測定器メーカー 19倍 8.12ドル 153.56ドル
Trex Company
(トレックス、TREX)
手すり、デッキなどの建材メーカー 18倍 4.82ドル 87.75ドル
10 XPO Logistics
(XPOロジスティックス、XPO)
物流代行サービス会社 17倍 5ドル 83.67ドル
11 Jazz Pharmaceuticals
(ジャズ・ファーマシューティカルズ、JAZZ)
医薬品メーカー。本社アイルランド。 16倍 8.05ドル 127.8ドル
12 Mitek Systems
(マイテック・システムズ、MITK)
ソフトウエア開発会社 15倍 0.65ドル 9.73ドル
13 United Rentals
(ユナイテッド・レンタルズ、URI)
建設機械レンタル会社 15倍 9.99ドル 146.98ドル
14 Ulta Beauty
(ウルタ・ビューティ、ULTA)
美容品小売・サロン店 14倍 18.15ドル 245.42ドル
15 Amazon.com
(アマゾン・ドットコム、AMZN)

説明↓
ネット通販 13倍 136.49ドル 1801.71ドル
16 Lululemon Athletica
(ルルレモン・アスレティカ、LULU)
ヨガウェア店。本社カナダ 13倍 15.1ドル 194.34ドル

※株式分割などを考慮に入れた調整後の株価で比較しています。

10倍株の個別銘柄の解説

2010年代のアメリカの10倍株の個別銘柄分析です。

ドミノ・ピザ

ドミノ・ピザは世界最大のピザ・チェーン店。オンライン注文のシステム構築で先端を走ったことで、2010年代に大幅な収益力アップを実現した。

機関投資家が安定性を評価

ドミノ株はまず、機関投資家に先行して買われた。とりわけ相場のボラティリティー(変動幅)が大きい局面で積極的に購入された。 大きな事件や災害、地政学的な不測の事態が起こっても、ピザの消費は手堅いからだ。AI(人工知能)を駆使した銘柄選定で知られる米ヘッジファンドのリベリオン・リサーチも、ドミノ株を大量購入したことで有名。リベリオンの「AI・機械学習ロボットアドバイザー(ロボアド)」では、保有株のトップとなった。

創業1960年、上場は2004年

ドミノの創業は1960年。上場は2004年。創業者トーマス・モナハン氏が宅配ピザを始めたきっかけは、大学時代に、ミシガン州の大学の近くで売りに出ていたピザ屋を頭金500ドルで買収したこと。その店は客席のスペースが狭く、お客が来てくれそうにない。それなら、こちらから配達しようと思いついたとういう。いわば『宅配』はやむを得ず始めた方式。1年後に2号店を開設。

生活習慣として定着

「受注後30分以内に配達」というポリシーを掲げたのが成長の起爆剤となった。それまでは、注文してもいつになったら届くのかわからないというのが消費者の不満だった。30分保証をうたい、それが守られなかったら、代金を割り引く制度を小さな町で実験してみたところ、好評だったので全店に広げた。当初は大学のある町や軍隊のキャンプのある町に絞って出店し、その後住宅地にも多数出店した。今では、ピザの宅配を頼むという行為が、米国民の生活習慣として定着している。それが収益や株価の大きな支えとなっている。

ネットフリックス(Netflix)

Netflix(ネットフリックス)は世界最大の動画配信業者として2010年代に急成長した。膨大な有料会員(サブスクリプション)を抱えるに至った。2019年9月末時点の有料会員は1億5800万人(うち米国内が6060万人)。 すでに世界190か国以上に進出している。

会員1億5800万人。会費収入は年間2兆円

会費は、世界平均で月10ドル。 すなわち、会費の収入は月15憶ドルとなる。 年間にすると、180億ドル(約2兆円)になる。 これだけ巨額のサブスクリプション収入を獲得できたメディア企業は前例がないという。

コンテンツ獲得に年間1.5兆円

同社は決して貯金はしない。 映画やドラマの製作または購入資金として現金を使っている。 さらに、借入金も積極的に行っている。

借金は1.1兆円

映画やドラマなどコンテンツの獲得・製作の費用は年間130億ドル(約1.5兆円)に上る(2018年の実績)。 動画配信のシステムの構築や品質向上などの技術投資も、年間12億ドルに達する(2018年実績)。 キャッシュフローは慢性的に赤字である。 2018年末時点の長期借入金は103憶ドル(1.1兆円)。 それでも将来の成長への期待が、株価の上昇を支えている。

「ディズニープラス」がライバル

米ディズニーが2019年にアメリカで新しい動画配信サービス「ディズニープラス」を開始した。 わずか数日で会員が1000万人を突破した。 ディズニーが持つ映画やテレビ番組が見放題なのが魅力。 傘下のピクサー、スターウォーズ、マーベル、ABC放送のコンテンツも含まれる。 しかも、会費が月7ドルで、Netflix(ネットフリックス)より安い。 ネットフリックスにとって最大のライバルになると見られている。

マーケットアクセス・ホールディングズ

マーケットアクセス・ホールディングズは、債券の店頭電子取引プラットホームで先頭を走る。1000社以上の機関投資家など国際規模の債券取引コミュニティーにアクセスできるプラットホームを提供している。

債券取引システム会社として急成長

同社の取引システムとして世界的に普及しており、債券の通貨建ては22種類以上に上る。現地通貨建て債券取引は前年比180%増で拡大。新興市場債券の出来高は全体の約23%を占めているという。

アジアでも成功

とりわけアジアでの伸びが大きい。アジア債券の流動性拡大に対する機関投資家のニーズに対応しており、2015年には、自社の電子取引プラットホームで、新たにインドネシア・ルピア、タイ・バーツ、シンガポール・ドル建ての債券を取引できるようにした。これが収益面で大きな追い風となった。

アマゾン

アマゾン(Amazon)の2010年代の株価上昇の原因は、レンタルサーバー事業(クラウド事業)の成功が大きい。 アマゾンの営業利益の大半は、レンタルサーバーで稼いだ。ネットショッピング事業はほとんど利益を出していないか、赤字である。

収益源はネットショップでなく、サーバーの貸し出し

アマゾンのレンタルサーバー事業(サーバー貸し出し事業)は、「AWS」というサービス名がついている。米アマゾン・ドット・コムを支えてきた技術をベースとしたクラウドサービスである。世界で数百万以上、日本でも10万以上のユーザーが利用している。

様々なソフトが無料で使える

AWSが評価された理由は、ユーザーにとって便利なツールが用意されている点にある。これは、従来のレンタルサーバー業者とは大きく異なる。具体的には、Webアプリ、モバイルアプリ、ゲーム開発、データウエアハウスなど、サイトを構築・構築するためのサービスやソフトがそろっている。この結果、中小企業から大企業まで幅広く支持された。日本でも、通信事業者、新聞社、銀行などがユーザーとなった。

独自ドメインも使用可能

WEBサイトの運営やWEBサービスを簡単に始められるのも特徴である。例えば「AWS Marketplace」で提供されている「WordPress AMI(AMIMOTO)」を利用すると、ボタン操作だけで「WordPress」 (Webコンテンツ管理システム)が実装されたサーバーを構築できる。DNS(URLとIPアドレスを対応付ける仕組み)として「Amazon Route 53」を使えば、独自ドメインでサーバーを公開できる。データのバックアップ(WordPressのスナップショット)には、「Amazon S3」が利用できる。そのほかの必要なサービスもそろえて、料金は月額25ドル以内に収められる。

クラウド市場で世界1位

クラウド市場は2010年代に急拡大したが、Amazonはクラウド分野で世界1位の座を獲得した。 競争相手の米マイクロソフトや米オラクルなどを大きく突き放している。